2007 FIFA女子ワールドカップ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2007 FIFA女子ワールドカップ
大会概要
開催国 中華人民共和国の旗 中国
日程 2007年9月10日 - 9月30日
チーム数 16 (6連盟)
大会結果
優勝  ドイツ (2回目)
準優勝  ブラジル
3位  アメリカ合衆国
4位  ノルウェー
大会統計
試合数 32試合
ゴール数 111点
(1試合平均 3.47点)
総入場者数 1,156,955人
(1試合平均 36,155人)
得点王 ブラジルの旗 マルタ(7点)
最優秀選手 ブラジルの旗 マルタ
 < 20032011

2007 FIFA女子ワールドカップ: FIFA Women's World Cup China 2007)は、2007年平成19年)9月10日から9月30日にかけて、中国で開催された第5回目[注 1]FIFA女子ワールドカップである。

開催までの経緯[編集]

中国は本来、前回大会の開催国となる予定であったが、SARSの蔓延により開催権を返上し[1]アメリカが代替の開催地となる[2]という経緯があった。主催者であるFIFAは2007年大会開催国を中国としたため、次回大会の開催地が決定されるまでは、これまで開催国となったこととない国からの選定は行われないこととなった[注 2]

開催地は前回に予定していた上海杭州武漢成都天津を加えた5都市で、開幕戦と決勝戦は上海で開催された。

この大会は北京オリンピックUEFA地域予選を兼ねており[3]、優勝したドイツ、ベスト4に進出したノルウェー、そしてスウェーデンの3国に出場権が与えられた[注 3]

予選[編集]

出場国[編集]

大陸連盟 出場
枠数
予選大会
予選順位
出場国・地域 出場回数 備考
AFC 1+2.5 開催国  中華人民共和国 5大会連続5回目
女子アジアカップ 準優勝  オーストラリア 4大会連続4回目
3位  北朝鮮 3大会連続3回目
4位  日本 5大会連続5回目
CAF 2 アフリカ女子選手権 優勝  ナイジェリア 5大会連続5回目
準優勝  ガーナ 3大会連続3回目
CONCACAF 2.5 女子ゴールドカップ 優勝  アメリカ合衆国 5大会連続5回目
準優勝  カナダ 4大会連続4回目
CONMEBOL 2 スダメリカーノ・フェメニーノ 優勝  アルゼンチン 2大会連続2回目
準優勝  ブラジル 5大会連続5回目
OFC 1 OFC女子ネイションズカップ 優勝  ニュージーランド 4大会ぶり2回目
UEFA 5 2007 FIFA女子ワールドカップ・ヨーロッパ予選英語版 1組 1位  ノルウェー 5大会連続5回目
2組 1位  スウェーデン 5大会連続5回目
3組 1位  デンマーク 2大会ぶり4回目
4組 1位  ドイツ 5大会連続5回目
5組 1位  イングランド 3大会ぶり2回目

本大会[編集]

概要[編集]

開催1ヶ月半前の8月2日、歴史的な事情により日本がいるグループリーグA組3日目の日程変更が発表となったこの大会は、開幕戦もまた歴史的なものであった。

2008年に行われる北京オリンピックの予行を思わせるような開会式の後に行われた開幕戦・ドイツアルゼンチン戦は、2つのオウンゴールを含む11得点によりドイツが本大会史上最多得点試合で勝利した。

翌日から始まった他のグループリーグも、台風による日程変更もあったものの全日程を消化。「死の組」といわれたB組では強豪国のスウェーデンが、C組では前大会4位だったカナダが、D組では常連国のデンマークが敗退する一方、開催国である中国ノルウェーアメリカ、ドイツとともに5大会連続で決勝トーナメントに進出。ほかにオーストラリア北朝鮮が初めて、ブラジルが3大会連続で、イングランドが3大会ぶりに決勝トーナメント進出を決めた。

8チームによる決勝トーナメント準々決勝はグループリーグ1位のチームがすべて勝利。つづく準決勝ではドイツがノルウェーを、ブラジルがアメリカをともに大差で破って決勝へ進出した。

3位決定戦が行われた直後の上海虹口体育場で午後8時(現地時間)に開始された決勝戦は前半を無得点で折り返し、迎えた52分、ドイツのエースストライカー、ビルギット・プリンツが先制ゴール。対するブラジルは64分にペナルティーキックを与えられるが、マルタの蹴ったボールは相手チームのゴールキーパーに防がれ得点とならなかった。そして86分にはコーナーキックからのボールを決めてドイツが追加点を上げ、そのまま2対0で試合終了。ドイツは大会初の2連覇を6試合すべて無失点により果たした。

エピソード[編集]

グループリーグの日本対ドイツ戦において、日本の国歌斉唱では多くの観客が起立せず、ブーイングも起きた。また、試合中もブーイングを浴びせられた。 試合後、日本代表は白地に青い文字で「ARIGATO 謝謝 CHINA!」と書いた横断幕を掲げた。国営新華社通信は「北京五輪でこのような反日感情を持ち込めば、中国人の国際的なイメージを損なう」とし、国際先駆導報も「日本人は不快な気持ちを乗り越える勇気を見せたが、中国人にはその勇気がなかった」と指摘した。地元メディアは「中国のブーイングは日本の横断幕に負けた」と観戦マナーを批判した。インターネット上では賛否両論であった[4]

会場一覧[編集]

天津 武漢 杭州 成都 上海
天津奥林匹克体育中心体育場 武漢体育中心 杭州黄龍体育中心 成都市体育中心 上海虹口足球場
収容人数: 60,000人 収容人数: 55,000人 収容人数: 52,000人 収容人数: 40,000人 収容人数: 34,000人

開催方式[編集]

グループリーグ[編集]

  • 4チームによる1回戦総当たりのリーグ戦
  • 試合時間90分(前後半各45分)を終了して同点の場合は引き分け
  • 勝ち点制度(勝利3点、引き分け1点、負け0点)
  • 2チーム以上の勝ち点が同じ場合は以下の優先順位で決定する
  1. グループ内での得失点差
  2. グループ内での総得点
  3. 当該チーム間での勝ち点
  4. 当該チーム間での得失点差
  5. 当該チーム間での総得点
  6. フェアプレーポイント(警告・退場処分の数による)
  7. 抽選

決勝トーナメント[編集]

  • ファーストラウンド各組上位2チームが準々決勝に進出
  • 90分間(前後半各45分)の1試合
  • 90分間で勝敗が決しない場合は30分間(前後半各15分)の延長戦ゴールデンゴールは適用しない)
  • 延長戦でも勝敗が決しない場合はPK戦によって決定

賞金[編集]

今大会から初めて、参加チームに賞金が支給されることとなった。

成績 金額
優勝 1,000,000.USドル
準優勝 800,000.USドル
3位 650,000.USドル
4位 550,000.USドル
ベスト8 300,000.USドル
グループリーグ敗退 200,000.USドル

結果[編集]

グループリーグ[編集]

  • 試合開始時刻は現地時間
  • 各組上位2チームが準々決勝に進出

グループ A[編集]

チーム
1  ドイツ 3 2 1 0 13 0 +13 7
2  イングランド 3 1 2 0 8 3 +5 5
3  日本 3 1 1 1 3 4 −1 4
4  アルゼンチン 3 0 0 3 1 18 −17 0


ドイツ  11 - 0  アルゼンチン
ベーリンガー 12分にゴール 12分24分
ガーレフレケス 17分にゴール 17分
プリンツ 29分にゴール 29分45+1分59分
リンゴル 51分にゴール 51分90+1分
スミゼク 57分にゴール 57分70分79分
レポート

日本  2 - 2  イングランド
宮間あや 55分にゴール 55分90+5分 レポート K.スミス 81分にゴール 81分83分
上海虹口足球場上海
観客数: 27,146人
主審: アメリカ合衆国 カーリ・ザイツ


アルゼンチン  0 - 1  日本
レポート 永里優季 90+1分にゴール 90+1分

イングランド  0 - 0  ドイツ
レポート


ドイツ  2 - 0  日本
プリンツ 21分にゴール 21分
リンゴル 87分にゴール 87分 (PK)
レポート



グループ B[編集]

チーム
1  アメリカ合衆国 3 2 1 0 5 2 +3 7
2  北朝鮮 3 1 1 1 5 4 +1 4
3  スウェーデン 3 1 1 1 3 4 −1 4
4  ナイジェリア 3 0 1 2 1 4 −3 1


アメリカ合衆国  2 - 2  北朝鮮
ワンバック 50分にゴール 50分
オライリー 69分にゴール 69分
レポート 吉善姫 58分にゴール 58分
金英愛 62分にゴール 62分

ナイジェリア  1 - 1  スウェーデン
ウワク 82分にゴール 82分 レポート スヴェンソン 50分にゴール 50分
成都市体育中心成都
観客数: 21,740人
主審: 中華人民共和国 牛麗君


スウェーデン  0 - 2  アメリカ合衆国
レポート ワンバック 34分にゴール 34分 (PK)58分

北朝鮮  2 - 0  ナイジェリア
金敬花 17分にゴール 17分
李今淑 21分にゴール 21分
レポート


ナイジェリア  0 - 1  アメリカ合衆国
レポート チャラプニー 1分にゴール 1分
上海虹口足球場上海
観客数: 26,100人
主審: 日本 大岩真由美

北朝鮮  1 - 2  スウェーデン
李雲淑 22分にゴール 22分 レポート シェリン 4分にゴール 4分54分


グループ C[編集]

チーム
1  ノルウェー 3 2 1 0 10 4 +6 7
2  オーストラリア 3 1 2 0 7 4 +3 5
3  カナダ 3 1 1 1 7 4 +3 4
4  ガーナ 3 0 0 3 3 15 −12 0


ガーナ  1 - 4  オーストラリア
アマンクァ 70分にゴール 70分 レポート ウォルシュ 15分にゴール 15分
デ・ヴァンナ 57分にゴール 57分81分
ギャリオック 69分にゴール 69分



カナダ  4 - 0  ガーナ
シンクレア 16分にゴール 16分62分
シュミット 55分にゴール 55分
フランコ 77分にゴール 77分
レポート

オーストラリア  1 - 1  ノルウェー
デ・ヴァンナ 83分にゴール 83分 レポート R.グルブランセン 5分にゴール 5分
杭州黄龍体育中心杭州
観客数: 33,835人
主審: 中華人民共和国 牛麗君





グループ D[編集]

チーム
1  ブラジル 3 3 0 0 10 0 +10 9
2  中華人民共和国 3 2 0 1 5 6 −1 6
3  デンマーク 3 1 0 2 4 4 0 3
4  ニュージーランド 3 0 0 3 0 9 −9 0


ニュージーランド  0 - 5  ブラジル
レポート ダニエラ 10分にゴール 10分
クリスチアニ 54分にゴール 54分
マルタ 74分にゴール 74分90+3分
ヘナタ・コスタ 86分にゴール 86分
武漢体育中心武漢
観客数: 33,500人
主審: タイ王国 カムヌン・パニパー

中華人民共和国  3 - 2  デンマーク
李潔 31分にゴール 31分
華妍 50分にゴール 50分
宋暁麗 88分にゴール 88分
レポート ニールセン 51分にゴール 51分
パースケ 87分にゴール 87分


デンマーク  2 - 0  ニュージーランド
ペデルセン 61分にゴール 61分
パースケ 66分にゴール 66分
レポート
武漢体育中心武漢
観客数: 54,000人
主審: 日本 大岩真由美

ブラジル  4 - 0  中華人民共和国
マルタ 42分にゴール 42分70分
クリスチアニ 47分にゴール 47分48分
レポート



ブラジル  1 - 0  デンマーク
プレチーニャ 90+1分にゴール 90+1分 レポート
杭州黄龍体育中心杭州
観客数: 43,817人
主審: アメリカ合衆国 カーリ・ザイツ


決勝トーナメント[編集]

 
準々決勝準決勝決勝
 
          
 
9月22日 17:00 武漢
 
 
 ドイツ3
 
9月26日 20:00 天津
 
 北朝鮮0
 
 ドイツ3
 
9月23日 17:00 武漢
 
 ノルウェー0
 
 ノルウェー1
 
9月30日 20:00 上海
 
 中華人民共和国0
 
 ドイツ2
 
9月22日 20:00 天津
 
 ブラジル0
 
 アメリカ合衆国3
 
9月27日 20:00 杭州
 
 イングランド0
 
 アメリカ合衆国0
 
9月23日 20:00 天津
 
 ブラジル4 3位決定戦
 
 ブラジル3
 
9月30日 17:00 上海
 
 オーストラリア2
 
 ノルウェー1
 
 
 アメリカ合衆国4
 

準々決勝[編集]


ドイツ  3 - 0  北朝鮮
ガーレフレケス 44分にゴール 44分
リンゴル 67分にゴール 67分
クラーン 72分にゴール 72分
レポート
武漢体育中心武漢
観客数: 37,200人
主審: オーストラリア タミー・オグストン


ノルウェー  1 - 0  中華人民共和国
ヘルロヴセン 32分にゴール 32分 レポート
武漢体育中心武漢
観客数: 52,000人
主審: ハンガリー ガアール・ジェンジ


準決勝[編集]



アメリカ合衆国  0 - 4  ブラジル
レポート オズボーン20分にゴール 20分 (OG)
マルタ 27分にゴール 27分79分
クリスチアニ 56分にゴール 56分

3位決定戦[編集]



決勝[編集]


ドイツ  2 - 0  ブラジル
プリンツ 52分にゴール 52分
ラウデール 86分にゴール 86分
レポート

優勝国[編集]

 2007 FIFA女子ワールドカップ優勝国 

ドイツ
2大会連続2回目

順位[編集]

国・地域名 成績
1  ドイツ 優勝 6 5 1 0 16 21 0 +21
2  ブラジル 準優勝 4 1 1 13 17 4 +13
3  アメリカ合衆国 3位 4 1 1 13 12 7 +5
4  ノルウェー 4位 3 1 2 10 12 11 +1
5  中華人民共和国 ベスト8 4 2 0 2 6 5 7 -2
6  オーストラリア 1 2 1 5 9 7 +2
7  イングランド 1 2 1 5 8 6 +2
8  北朝鮮 1 1 2 4 5 7 -2
9  カナダ グループリーグ敗退 3 1 1 1 4 7 4 +3
10  日本 1 1 1 4 3 4 -1
10  スウェーデン 1 1 1 4 3 4 -1
12  デンマーク 1 0 2 3 4 4 0
13  ナイジェリア 0 1 2 1 1 4 -3
14  ニュージーランド 0 1 2 1 0 9 -9
15  ガーナ 0 0 3 0 3 15 -12
16  アルゼンチン 0 0 3 0 1 18 -17
  • PK戦で決着がついた試合は記録上引き分けとなる

得点ランキング[編集]

順位 選手名 得点数
1 ブラジルの旗 マルタ 7
2 アメリカ合衆国の旗 アビー・ワンバック 6
ノルウェーの旗 ラグンヒル・グルブランセン
4 ドイツの旗 ビルギット・プリンツ 5
ブラジルの旗 クリスチアニ
6 ドイツの旗 レナーテ・リンゴル 4
イングランドの旗 ケリー・スミス
オーストラリアの旗 リサ・デ・ヴァンナ
9 ドイツの旗 ザンドラ・スミゼク 3
カナダの旗 クリスティン・シンクレア

表彰[編集]

受賞者、受賞国は以下の通り。

大会最優秀選手[編集]

ゴールデンボール シルバーボール ブロンズボール
ブラジルの旗 マルタ ドイツの旗 ビルギット・プリンツ ブラジルの旗 クリスチアニ

得点王[編集]

ゴールデンシューズ シルバーシューズ ブロンズシューズ
ブラジルの旗 マルタ アメリカ合衆国の旗 アビー・ワンバック ノルウェーの旗 ラグンヒル・グルブランセン
7得点 6得点 6得点

その他の賞[編集]

最優秀GK フェアプレー賞
ドイツの旗 ナディネ・アンゲラー  ノルウェー

オールスターチーム[編集]

GK DF MF FW

ドイツの旗 ナディネ・アンゲラー
ノルウェーの旗 ベンテ・ノルドビー

ドイツの旗 アリアネ・ヒンクスト
中華人民共和国の旗 李潔
ノルウェーの旗 アーネ・スタンゲラン・ホルペスタッド
ドイツの旗 ケルシュティン・シュテーゲマン

ブラジルの旗 ダニエラ
ブラジルの旗 フォルミガ
イングランドの旗 ケリー・スミス
ドイツの旗 レナーテ・リンゴル
ノルウェーの旗 イングヴィル・ステンスラン
アメリカ合衆国の旗 クリスティン・リリー

オーストラリアの旗 リサ・デ・ヴァンナ
ブラジルの旗 マルタ
ブラジルの旗 クリスチアニ
ドイツの旗 ビルギット・プリンツ

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 「FIFA女子世界選手権」と呼称されていた第1回大会(1991年)から第3回大会(1999年)を含んだ回数。
  2. ^ 中国は1991 FIFA女子世界選手権の開催地。
  3. ^ イングランドはオリンピックへの出場権がないため[3]、UEFA内での順位は1位:ドイツ、2位:ノルウェー、3位:スウェーデンおよびデンマークとされた(ともにグループリーグ敗退であった2チームについては、北京オリンピックの予選に関しては同順位と扱われ、プレーオフを実施するものとされていた[3])。スウェーデンはプレーオフでデンマークを破り北京オリンピックへの出場権を得た。
  4. ^ a b 九一八事変(満州事変)勃発の日(柳条湖事件)との関係で変更。
  5. ^ a b c d e 台風により変更。

出典[編集]

  1. ^ SARS: FIFA executive decides to relocate FIFA Women's World Cup 2003 (英語) FIFA公式サイト 2003.5.3付ニュースリリース
  2. ^ FIFA Women’s World Cup 2003 to be held in USA (英語) FIFA公式サイト 2003.5.26付ニュースリリース
  3. ^ a b c Three European teams will book their spot to Beijing 2008”. 国際サッカー連盟 (2007年9月6日). 2011年9月13日閲覧。
  4. ^ 女子サッカー日本代表の横断幕に、ブーイングの中国反省[1]

外部リンク[編集]